第86話 建巳 act.8 another,side story「陽はまた昇る」
A5ou6heuresdusoirkenshi―周太24歳3月末第86話建巳act.8another,sidestory「陽はまた昇る」桜の窓かすかに甘い、ほろ苦い。午後、陽だまり明るい僕の部屋。「は…」息ついて、肩の力そっと消える。脱いだスーツかすかな風ゆらす、カーテン揺らせて春が匂う。もう3月が終わる、そうして酣になる春の窓辺、周太は微笑んだ。「春だね…」カーテンゆらす窓、ガラスひらいて桜ほころぶ。紅い葉やわらかな山桜、この桜を父は愛していた。『紅い葉と白い花が清々しいだろ?山だともっときれいで…春の山はきれいなんだ、』幼い日、口ずさむような幸せな声。想うだけで幸せだと瞳は微笑んでいた、あの眼差しが愛した場所に自分も行く。「山はひとりだと僕には難しいけど…ね、お父さん?」山桜に微笑んで、窓かちり錠を閉じる。...第86話建巳act.8another,sidestory「陽はまた昇る」